読んだのは、すこしまえ。
すごく多面的に、味わいが流れ込んでくる本だった。
主として回想シーンでではあるが、中学生のピュアな感情、という中二的な空気によるライトノベル的な駆動力もありつつ、リアリティーとメッセージ性もある。こういうのは、やっぱりSFの畑は強い。
同時に、現在の主人公は職務上の権限を使って非合法の薬物を手に入れたり、それに耽るという、社会と日常にまみれた、“安定したにごり” の空気もある。
作品の心象風景として、両方を備えている。そして、そのどちらにも私は強く共振できる。
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それだけ魅力的な主人公がいる一方で、ストーリーの中で主人公の彼女たちと敵対する『生府』の思想にも、私は共鳴するのだ。
バイクとタバコは人生のすべての局面において、たぶん私は馬鹿にしてきたし、宝くじなどの統計学的にメリットのありえないものに対する嗜好も、基本的には見下しながら生きている。(そうでない瞬間も、ポイントポイントではあった)
だから、ひたすら健全で合理的で生産性の高い生き方を推奨する、かの体制の思想は、私と親和性が高い。その押し付けがましさや、のがれにくさを置くとすれば。